【合宿レポート】男子新体操全国指導者選手合同合宿 東北会場

報告者:

実施場所 白石市ホワイトキューブ
実施期間 2015年1月31日~2月1日
【1日目】
全体を2グループに分け、柔軟運動、アイソレーションを入れ替え制で行った。特にアイソレーションに関しては、近年男子新体操のトレーニングに多くのチームが取り入れるようになってきており、大学生が実施する姿を見ながらのトレーニングは、少ない時間であったが、特にジュニア、高校生に刺激になっていたようである。
その間別室において、指導者向けに「男子新体操の現状と報告」として話があり、国内外の男子新体操における評価や新ルールの大まかな概要の話があった。また、指導者側から高体連との連携について質問があった。
最初の講習は、スポーツアクロ協会の三畑先生、磯前先生によるアクロ技術講習会である。
昨年度に引き続きのアクロ技術講習であったが、昨年度より難易度が高い講習内容だった。はじめに映像を見ながら、現在のアクロ体操の現状、世界のトップレベルの技術を確認した。特にメンズ4といわれるカテゴリーでは、中国のチーム演技が紹介され、大技が次々繰り出されるたびに、選手・指導者から大きな歓声が上がり、アクロの技術の高さを改めて感じた。
その後実技に移り、まず倒立系の講習を行った。土台の上に、脚前挙の姿勢で乗ることから始まり、肩の上に乗る技術、手の上で倒立を行う技術まで紹介があった。トス系の講習では男子新体操でも多用される組の飛ばし技術を教わったが、我々の競技では普段行わない、足からの受けに苦心していたようである。
片手倒立など、大学生でも難しい技術を教えていただいたが、今後の男子新体操とアクロの交流にからめ、アクロの実際を体験できた貴重な体験であった。なお実技講習では青森大学の学生がテストパイロットを務めており、講師からもお褒めの言葉をいただいていた。
次の講習は、指導者は新ルールの講習、選手は川戸講師によるコーディネーショントレーニングに分かれて行った。
指導者に対する新ルール講習では、ルールの概要説明をしていただき、これまでの方向性を大きく変更するものではなく、具体化したり2006年版からの数年に渡る改訂を整理したと説明。難度変更や構成要素の変更など細かい部分の説明もあったが、参加者からは特に大きく変更される個人競技の部分に関して、質問が多く出ていた。
規則書は2月半ばには発行され、来年度はまず、インカレ、全日本選手権で採用し、再来年度から高校・ジュニアに適用する予定であるとの説明があった。
選手に対するコーディネーショントレーニング実技では、全員一緒になって同じ内容を実施した。
バランス能力やリズム能力(真似る力)は大抵の選手達が難なくこなすことができていたが、非日常な空間(言葉と反対方向に跳ぶなど)での変化や反応する能力に関しては参加者全員が苦労しているように見えた。大学生よりもジュニアの選手達の方が素早く反応する場面も多く見られた。
ただ普段の競技中心の練習とは異なり、失敗など気にせずに思い切り楽しく幅広い世代の選手達が一緒になってやることは必要だと感じた。
脳と身体をつなげる神経を鍛えると同時に、ストレスの発散や気分転換になり、更に様々なことに対しての対応力、応用力の向上のために必要なものだと改めて感じた。
【2日目】
青森大学の学生によるアイソレーション、柔軟から2日目がスタートした。
この日は、国士舘大学女子体操競技部監督の小畑秀之氏による、タンブリング技術の講習となった。軽快な語り口で、選手のみならず指導者をも引き込む小畑先生の話術に自然と全員が引き込まれていった。
はじめに、簡単なストレッチから始まったのだが、これが目に見える形で短時間に効果が現れ、普段我々が考えているストレッチの概念を大きく揺さぶられた。その後前転・後転の指導があり、特に後転が、宙返りにおけるタックル技術・足を通す位置と深く連動していることを教わり、仰向けの姿勢から後転をすることで、宙返りを飛躍的に上達させることができることが実際に学生の実演により証明された。
その後、倒立姿勢の確認に入った。全ての技術の基礎となるのは、倒立姿勢だということであった。練習法としては、決して初めから倒立姿勢で行うのではなく、床面にうつ伏せになった姿勢でフラットな体の姿勢を確認しなければならないとのことであった。また、肩甲骨のポジションの重要性が説かれていた。肩甲骨を外側に出し、肩をロックすることで安定した倒立姿勢が取れるということである。これもはじめは支配距離を短くして行うことで正しい姿勢を身につけることが大事であると言うことであった。例えば壁面を使用したり、椅子を使用するなどして、足を曲げた状態でまずは腰まで正しく体重を乗せることが肝心だということである。
体を締めるという我々が一般的に教えている内容に関しても、お尻を締めるというより、太ももの内側を締めるという方が正しく、その安定性を選手達に身をもって体験させることで、選手達も体幹の締まりを実感していた。また、学生を用いた実演では、目に見える形で倒立姿勢が変わり、驚嘆の声が出ていた。
次に、側転・ロンダード・前転飛びの技術について、技術指導があった。我々が普段引き上げや、体の起こしなど、当たり前として指導し、意識させていたことの間違いを指摘され、目から鱗の選手・指導者が多くいたのではないだろうか。ここでも、足の振り上げにおいて、倒立姿勢を経過することの重要性が説かれ、基本となる倒立姿勢の重要性が再確認された。また、助走に頼らず、技自体の技術を高める練習が必要であるということも説かれていた。ビッグタンブリングにつなげるための必要要素を教授いただき、選手・指導者ともに、これからの練習に積極的に取り入れていく必要性を感じた。
小畑氏の講習の中で、強調されていたことは、やみくもに練習することなく、正しい技術・姿勢を理解・意識し、段階を踏んで練習を行うことの重要性である。また、選手・指導者が共通理解を持って、練習を行うことで、より有効に時間を活用でき、より密度の濃い練習を行うことができる。そしてそれが競技力の向上につながるということであった。先生の指導内容は、単に技術指導の枠にとどまらず、物事に対する取り組み方、考え方に及び、まさしく我々にとって目から鱗の指導内容だった。講習時間も30分超過した形で更に学生から質問が出るなどとても有意義な講習となった。
今回の合宿では、全体を通して、直接、新体操技術の講習を行うのではなく、様々なアプローチから新体操の技術につなげていくという視点から講習を企画・実施した。普段、指導者が慣例で指導している部分や選手が闇雲に練習している部分の問題点を洗い出し、有意義な練習につなげるきっかけになったのではないだろうか。本講習が、選手・指導者のスキルアップにつながり、東北の新体操のレベルアップにつながることを期待している。
<写真提供:中田吉光_青森大学>