第36回世界新体操選手権レポート1

報告者:山﨑浩子

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9月10日、ソフィア(ブルガリア)にて、第36回世界新体操選手権が開幕した。
本日から4日間にわたって個人総合予選(同時に種目別予選)、国別対抗が行われるが、抽選による試技順で日本は、1日目がボール、2日目がフープ、3日目がクラブ、4日目がリボンとなっている。
国別対抗戦は各国3名から4名で競われ、本年はフープ3演技、ボール3演技、クラブ2演技、リボン2演技と決められており、計10演技中ベスト8を合計した点数で競われる。

日本からは皆川夏穂、喜田純鈴、大岩千未来の3選手が出場。
フープ 皆川、大岩、喜田
ボール 皆川、大岩、喜田
クラブ 皆川、大岩
リボン 皆川、大岩
というオーダーである。

個人総合決勝に進むには3演技の合計点で競われるため、決勝への可能性があるのは皆川、大岩の2名ということになる。

日本のトップバッターは大岩。
アジア大会を終えて、疲れを取る間もなくこの大会に挑むため、ソフィア入りしてからの練習初日はあまり良い出来ではなかった。
それでも日を追うごとに徐々に調子が上がってきて、今日のボールの演技は非常に素晴らしいものであった。
彼女の持ち味でもあるローテーションが決まり、パンシェローテーション、後方支持ありローテーションなども、姿勢の美しさとともに回転数も稼いだ。
AD(加点対象となる手具操作)もほぼ行い、17.300(D難度点9.500 E実施点7.800)と高い点数を得た。
特にDのうち、D1<BD身体難度(ジャンプ、バランス、ローテーション)とステップ>の価値点は5.00であったが、本日ボールの演技を行ったロシアのDina AVERINAと同点である。
まだD3<AD、R(リスク=手具を投げ上げ、2回転以上の転回を行う)>のほうが、作品に組み込まれているものが少ないことと、Eにおいて、つなぎの悪さなどはあるが、今後練習を積んでいけば、より高得点も狙っていけるであろう。

続いて喜田の登場。
春先に腰椎を故障し、ずっとリハビリを続けてきた喜田は、8月のWCCミンスク大会、WCCカザン大会に出場して、なんとか試合勘を取り戻そうとしてきた。
少しずつ調子も上がってきており、昨日のポディウムトレーニング(本会場練習)では、良い演技を見せていた。
しかし、出だしのボールの指回しがうまくいかないと、そこからリズムが少しずつ狂ってきた。
ボールを両手でとるか片手でとるか一瞬迷いを見せると、落下。ラストのADでもボールをキャッチできずに手具なしでポーズをとることになった。
14.050(D8.200 E5.900 Pタイムペナルティー0.05)
やはりしっかりとした練習を長期にわたって積んできていないため、いまひとつ自信が持てなかったのであろうが、ほんの少しうまくいかなくても、そこで気持ちを切り替えられるかどうかで、試合の出来は大きく変わってくる。
喜田はコンディションを鑑み、2種目しか出場しないため、明日のフープが最終種目。気持ちを切り替えられるかどうかが鍵となるであろう。

ラストは皆川。
皆川はポディウムトレーニングの際に左肩を少し痛め、心配されたが、テーピングをしながら持ちこたえている。
演技もまさにこらえているといった感じで、Rで投げが乱れるとなんとか対処。動きに少々硬さがあり、いくつかのADもやらないなど、決して会心の出来ではないが、悪いなりにまとめることができていて、18.400(D9.800 E8.600)とまずまずの点数を得た。もたつきがありながらもEで8.600が出たのは、作品の良さや流れるような美しい動きが評価されているのであろう。

優勝候補筆頭のロシア勢もボールの種目からであったが、どの選手も大きなミスなく演技した。
SOLDATOVAは多少慎重になっている感じもあるが、それでもBDの大きさは群を抜いており、音楽と動きも一致していてすばらしい演技であった。
20.250(D11.200 E9.050)

双子の姉妹、Arina AVERINAとDina AVERINAも、少々のもたつきはあるものの大きなミスなく演技して、
Dinaが20.150(D11.200 E8.950)、Arinaが20.050(D11.300 E8.750)と、3選手とも20点台に乗せた。

ロシア勢と個人総合争いをすると思われているイスラエルのASHRAMは、同じくボールの種目で2度の大きな落下。
彼女にしては珍しいほどのミスであった。
17.000(D10.100 E6.900)
同じくイスラエルのZELIKMANは大きなミスなく、18.950(D10.800 E8.200 P0.05)

地元ブルガリア勢はフープの種目からであったが、どの選手も緊張で硬くなっていた。
それでも落下は絶対にしないという意思がしっかりと見え、良い練習を積んできたという感じが見てとれた。
KALEYN   19.050(D11.000 E8.100 P0.05)
TASEVA    18.850(D10.600 E8.250)
VLADINOVA  18.700(D10.200 E8.500)

ウクライナのNIKOLCHENKOは、フープで伸びやかな演技を見せた。
ローテーションが得意な選手であるが、いつもより回転数は少ない印象。しかし、ジャンプの高さや伸びやかさには目を見張るものがあり、よどみなく演技した。
19.850(D11.400 E8.450)

ベラルーシのSALOS、HALKINAはフープでいずれも落下があり、17点台。
イタリアのAGIURGIUCULESE、BALDASSARRIはフープで大きなミスなく、18点台。

USAのZENGはボールでミスなく18.500。皆川の少し上を行っている。
USAのGRISKENASのほうはRの投げのコースが大きく外れ、16.200。

1種目を終えた時点で、イスラエルのASHRAMやベラルーシ勢、GRISKENASなどにミスが出ているが、個人総合決勝進出には3演技の得点で競うことから、1種目のミスはあってないようなもの。残りの3種目を完ぺきにやれば何も問題はないし、むしろ戦いは個人総合決勝に進んでから。
決勝に合わせて、しっかりと調整してくるであろう。

本日はフープの演技をした国とボールの演技をした国があるため、各種目まだ半数の選手しか演技していないことになる。
よって、種目別決勝に進めるか否かも結果は出ていない。
皆川は、ボールで6位に位置している(種目別決勝に進めるのは各国最大2名。ロシア勢のうち一人は抜けるため、実質現在5位)。
しかしながら、ブルガリア、ベラルーシ、ウクライナが明日ボールの演技をすることを考えると、非常に厳しいと言えよう。

とにかく、いまできることをしっかりとやる、ただそれだけである。

明日は同じく個人総合予選、国別対抗戦が行われ、日本はフープの種目を行う。