2019新体操モスクワグランプリ現地レポート1

報告者:山﨑浩子

2月16日、日本にとっては今季初戦となったモスクワグランプリが開幕した。日本からの出場は、団体競技にフェアリージャパンPOLA、個人競技のグランプリの部に皆川夏穂、インターナショナル部門に大岩千未来。

本日はグランプリの団体総合と個人総合が行われた。

<団体総合>
団体は今季から種目が変わり、各国がどんな演技を繰り広げるのか楽しみなところではあったが、シーズン初め、それも2月と早い時期であるため、参加国は7カ国と少なかった。

まずはボール5の種目から。
日本は、故障から1年ぶりの出場となった竹中が、一瞬正面の方向を見失ったがあわてずに対処した。全体的には大きなミスはなく、22.900。まずまずの出だしとなった。

出場選手
杉本早裕吏
松原梨恵
熨斗谷さくら
鈴木歩佳
竹中七海

イスラエルは昨年と比較すると、格段に良くなっていた。オリンピック翌年は世界選手権に出場しておらず、昨年もまだまとまりがなかったが、いつものイスラエルらしさ、安定感が増していた。
一ヶ所、リスクで落下が出てしまったが、全体的には移動キャッチも少なかった。22.850。

ロシアは出だしのMGキックで落下。連係でも落下すると、他の連係でも膝をついて転ぶような形でのキャッチや、落下が見られ、20.400。

一種目めが終わった時点で日本が1位、僅差でイスラエルが2位、3位にロシアで折り返した。

二種目めはフーブ3 & クラブ2。
この種目はどのチームもミスが相次いだ。

イスラエルは、交換で落下すると、連係でも落下。場外まで手具が出て追いかけるシーンが二度。取り戻しにも時間がかかってしまった。ポディウムでは抜群の仕上がりを見せていただけに、試合の難しさを改めて感じるばかりである。
昨年から難度点が青天井になり、団体も連係をこれでもかと詰め込んでいる。隙間なく詰め込むがあまり、ひとつ崩れるといくつもの連係を飛ばすことになる。イスラエルは13.250で2種目合計が36.100。

日本も同様にミスが出た。ステップ中のコラボレーションでミスが出ると、連係、交換に落下ミスが出た。リズムが狂って曲より遅れたため、交換が投げられない箇所もあった。16.600で合計39.500。

出場選手
杉本早裕吏
松原梨恵
熨斗谷さくら
鈴木歩佳
横田葵子

ロシアも連係で二度落下ミスは出たが、作品全体の構成が壊れるほどではなく、23.450。合計43.850。

総合でロシアが1位となり、日本はボールの貯金で2位。今季初の試合でなんとか表彰台に乗った。
3位にはウズベキスタンが入った。
イスラエルはフープクラブのミスが響き、4位に。
以下、アゼルバイジャン、カザフスタン、トルコ。

全体的にはどの国もフーブクラブの方がまだまとまりきれていない印象。
高い難度点を得るには手具を投げなければならず、打ち上げ花火がずっと連続で上がっているような感じである。
もう少しこなしが良くなってくれば、バタバタとした印象も薄れるかもしれないが、高得点を取るためにどこまで攻めてどこのラインで守るかが難しい判断となっていくだろう。

<個人総合>
グランプリ個人総合は12人ずつ3つのグループに分かれ、それぞれのグループで4種目を終えていく形であったが、
皆川ら主要な選手たちはCグループに集められており、まるで世界選手権の決勝を見ているようであった。

皆川の第一種目はリボン。
出だしから美しい演技を見せていたが、中盤のBD(身体難度)のジャンプ時にリボンに結び目ができてノーカウント。結び目をほどく作業に手間取ってしまった。16.000。

2種目めはフープ。
昨年の世界選手権後、難度点のアップに取り組んできたが、このフープもAD(加点対象となる手具操作)を多く組み込み、構成上の難度点を大幅に上げてきた。
その取り組みの成果が出て、1箇所落下が出たものの19.200。自己最高得点を記録した。

3種目めはボール。
MGキックのローテーションが決まらなかったが、ボールも数多くのADを入れ込んでいる。
まだまだやり切れていない箇所もあるが、19.650。20点台もすぐそこまで見えてきた。

最後の種目はクラブ。
大きなミスはなかったが、投げが不安定になるところがあり、18.600。

4種目合計73.450で皆川は11位(36人中)。

総合1位になったのはロシアのDina AVERINA。
ボールだけ落下ミスが出てしまったが、他の種目は相変わらず難易度の高い手具操作に挑戦していた。また、リボンでは体の動きもしなやかになっており、芸術性も感じられた。
フープ22.500
ボール20.250
クラブ22.250
リボン19.200 合計84.200

2位はロシアのArina AVERINA。
前半種目のフープとクラブでは落下ミスが2度ずつ出たが、後半は持ち直した。
フープ22.400
ボール18.650
クラブ20.000
リボン18.900 合計79.950

3位はロシアのSOLDATOVA。
前半種目のフープでは、体のキレもすばらしく、BDの精度も非常に良かった。
パンシェのローテーションに入る前に少しもたついたが、ローテーション自体は5回転を超え、ハリのある演技を見せた。
しかし、後半種目になると疲れからか、MGキック系の動脚が決まらなくなっていった印象。
フープ21.300
ボール19.000
クラブ21.200
リボン18.400 合計79.900

4位はロシアのSELEZNEVA。
BDの精度が良く、ADも巧みにこなした。
フープ21.300
ボール20.700
クラブ19.800
リボン17.900 合計79.700

5位にベラルーシのSALOS。
フープ21.350
ボール20.100
クラブ19.250
リボン17.700 合計78.400

6位はロシアのTRUBNIKOVA。プロポーションが良く、柔軟性や技の巧みさも申し分ない。
フープ19.700
ボール20.050
クラブ20.300
リボン16.400 合計76.450

7位はブルガリアのVLADINOVA。フープとクラブにミスが出たが、小気味よい演技をした。
フープ19.150
ボール19.900
クラブ18.950
リボン17.950 合計75.950

8位はロシアのANNENKOVA 合計75.450
9位はロシアのGUZENKOVA 合計74.100
10位ジョージアのPAZHAVA。
出だしのボールでは落下ミスを2度犯して、16.150。
しかし徐々に調子を上げ、リボンやフープではサロメらしいステップや世界観を見せた。
フープ20.200
ボール16.150
クラブ18.850
リボン18.300 合計73.500

11位に、0.05差で皆川である。

出場した7選手が全員上位に位置したロシア。
その層の厚さは目を見張るものがある。若い選手も出てきたが、東京オリンピック以降に変更されるであろうルールを意識してか、芸術性の部分でレベルが高いように感じられた。
音楽がしっかりと感じられる動きを見せてくれて、今後が楽しみな選手たちであった。

こういった中で皆川は、まだまだこなしが良いとは言えないが、課題であった難度点のアップを成功させ、19点台に2種目を乗せられたのは大きな収穫であろう。
もう少しBDの精度が上がり、動きのキレが良くなっていけば、20点台を並べていくことも不可能ではないと言えよう。

明日は種目別決勝が行われ、団体は2種目に、皆川も4種目すべてに出場。
またインターナショナル部門の個人総合が開催され、大岩千未来が出場する。
現地レポート2(2月17日)
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